2人が本棚に入れています
本棚に追加
深夜の無人の街中を逃げる!
一台しかないエレベーターが下へと降りて行き一階で止まる。彼女は既にその中だ。何度も呼びボタンを押すが開閉と昇降が旧式でゆっくりなのがもどかしい。ようやく上がって来たボックスに飛び乗って、一Fのボタンを押す。清しい橘の香りが残っていて愛しかったが、唯、水晶の部屋を出た途端に感じた不安が、エレベーターが下降するにつれて増して行くのが不気味だった。まるで地獄に落ちて行くような気がする。エレベーターから降りて表に出るのは尚更気が進まなかった。ビルの外に出るのは、恰も‘自分の身体から離れる’ようで、いかにも気が重かったのだ。しかし思い切って、出る。街灯に照らされた通りには禍々しさが充ちていた。ダリの描く超現実派の絵画のように無人の街角を二人の少女が手に手を取って逃げて行く。どのビルの口も固く固く鎖されていて決して少女たちを受け付けない。自我と自己保存の、それは究極の写し絵とも見れたことだった。
【真夜中の悪鬼の街中を逃げて行くA子とB子】
最初のコメントを投稿しよう!