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追うと云うよりは彼方に聳え立つ光の宮殿にA子とB子を追い込んで行くようなアスラーだったが、はたしてそこには渋谷ヒカリエのような、あるいはセルリアンタワーのような、但し実際のそれよりは遥かに巨大で華麗な、まさに光り輝くと云う他はない一棟のビルが聳え立っていた。全東京を睥睨するかのごとき魔宮の威容。他のビル群からの恐怖心を吸い取っては自らの輝きとしている様が、何故か今の私の目にはっきりと見て取れる。自我と自己保存の闇に沈む街にあってはそこだけが恰も永久の不夜城のようだ。現実の街々にあっては朝が来れば各戸が窓を開け、戸口を開くのだが、この常闇の東京メガロポリスに於いては反対にすべてのビル群がみずから戸口を開くことによってのみ、始めて曙光を呼ぶのだった。しかしいつか、必ずや、来らねばならないその大いなる光のもとにあっては、彼の魔宮と雖も、さしものあやかしの光を失うのに違いないのだ。しかし何故こんなことが私ごときに判るのか、云えるのか…いやそうではないのだ。一瞬見えた気がしたのである。次に起きた驚天動地の私の行動への誘いともども、それは何かが為さしめ、見さしめたことに拠る…と今は云うほかはない。
【東京メガロポリスを睥睨する魔宮の威容】↑作品by Artie_Navarre
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