1 鈍感すぎる彼女 ★

1/12
前へ
/241ページ
次へ

1 鈍感すぎる彼女 ★

物心ついた瞬間から、俺は幼馴染の女の子に恋焦がれていた。 ドジで、わがままで、おまけに天然。放っておけなくて、目が離せなくて。 ずっと、一番近くに居た。 ーーーいや、居たつもりだった。 彼女に初めて彼氏が出来たのは、忘れもしない高校1年生の夏。終業式の日にクラスの男子に告白されたらしく、すんなり、アッサリ。 「ねえ、大和っ!私、彼氏出来ちゃった!」 そう言われた時の衝撃は、昨日のことみたいに覚えている。あの時の俺は、どこかで自惚れていたから。 陽奈も、きっと俺のことが好きなんじゃないか、って。 どうしても気持ちの整理が付かなくて、何となく適当に彼女を作って。でも続かなくてキスもしないまま別れて、また彼女を作って。 その1年後、そうこうしてるうちに、男子寮でシャツのボタンを掛け違えた彼女を見つけた時は、本当に死にたい気分になった。 「超、痛かった!」とか言いながらも幸せそうに微笑うから、祝ってやるしか出来なくて。 その時、心に決めた。 この恋は、一生叶わない。だから、見守るに徹しよう。彼女が幸せならそれで良い、って。 そこからは人並みには遊ばせてもらった。だって、毎日毎日、高いテンションで俺のところにやって来て、「先週はね、」「昨日はね、」「来週はね、」って惚気話を聞かされるもんだから。 女遊びくらいしていないと、おかしくなりそうだった。
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7667人が本棚に入れています
本棚に追加