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それから社会人になって、数年後。
「ええっ、また別れたの?何でっ!?」
仕事の帰りに我が物顔で俺の家に寄った陽奈が、大きな声を上げた。
「…っせーな、」
「だって、びっくりしたから!」
「お前の声に一番ビックリしたよ、」
呆れながら、ハンバーグプレートをテーブルに乗せると、彼女は目を輝かせた。
「っわ〜!美味しそうっ!」
俺より先に席についた彼女は、「いいよ」とも言わないのに1人で「いただきます」と手を合わせて。大慌てでハンバーグを口に運んだ。
「美味しい〜っ!」
子どもみたいに頬張っている彼女の口元には、グレービーソースが垂れている。
「…陽奈、それ…、」
親指でそっと拭ってやると、口の中身をゴクンと飲み込んで。
「ありがと!」
ニコっと微笑う彼女。
あー、可愛い。可愛いったらない。
ま、そうやって微笑ってくれるあたり、意識されてないなって、毎回痛感する訳なんだけど。
下着姿で廊下をうろついたり、リビングで大の字で眠ったり。きっと彼女は俺のことを男とすら思っていない。
俺がいつも理性と闘っていることも、彼女は全く知らない。
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