1 鈍感すぎる彼女 ★

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それから社会人になって、数年後。 「ええっ、また別れたの?何でっ!?」 仕事の帰りに我が物顔で俺の家に寄った陽奈が、大きな声を上げた。 「…っせーな、」 「だって、びっくりしたから!」 「お前の声に一番ビックリしたよ、」 呆れながら、ハンバーグプレートをテーブルに乗せると、彼女は目を輝かせた。 「っわ〜!美味しそうっ!」 俺より先に席についた彼女は、「いいよ」とも言わないのに1人で「いただきます」と手を合わせて。大慌てでハンバーグを口に運んだ。 「美味しい〜っ!」 子どもみたいに頬張っている彼女の口元には、グレービーソースが垂れている。 「…陽奈、それ…、」 親指でそっと拭ってやると、口の中身をゴクンと飲み込んで。 「ありがと!」 ニコっと微笑う彼女。 あー、可愛い。可愛いったらない。 ま、そうやって微笑ってくれるあたり、意識されてないなって、毎回痛感する訳なんだけど。 下着姿で廊下をうろついたり、リビングで大の字で眠ったり。きっと彼女は俺のことを男とすら思っていない。 俺がいつも理性と闘っていることも、彼女は全く知らない。
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