1 鈍感すぎる彼女 ★

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年末年始は、実家に帰る気が起きなかった。 帰ったら陽奈に鉢合わせるのが目に見えていたし、気まずそうにされたり無視されたりしたら、傷に塩を塗るようなものだ。 だから、「出張が長引いた」とか適当に言い訳をして。別のタイミングで帰ると約束した。 のに、新年最初の勤務後、俺を待ち伏せしていた彼女が、目の前で何か言いたげにモジモジした時は驚いた。 頬を染めて、俯いて、明らかに照れている様子で。 27年も一緒に居るのに、そんなところ、見たことがない。 俺に見せて欲しいと思っていた表情を、まさに目の前でされたから。俺の感情は最高潮に高ぶった。 まさか、まさか。 潤んだ瞳と目が合ったら、咄嗟に逸らされて。髪を弄る仕草を見て、確信した。 陽奈、俺のこと、好きなんだって。 「…もう良いよ、陽奈」 思わず、笑みが溢れてしまった。 だって、絶対叶わないって、本気で思ってたから。 まさか、こんな日が来るなんて。 「え、」 驚いている彼女の手を引いて、胸の中に閉じ込めた。 彼女が落ち込んでる時や、喧嘩した時。こうやって抱き締めて、慰めたり仲直りしてたけど。今は、全然感覚が違う。 「もう分かったから、陽奈の言いたい事は」 ギュッと抱き締めて、耳に唇を寄せた。 「ありがとう、嬉しい…」 それは、心から溢れた言葉だった。 それから3日で同棲を始めて、春になったらプロポーズをした。 周りからすれば付き合って速攻だな、って思われたかもしれないけど、俺からすれば27年も待っていたから、特に急いだつもりもなかった。
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