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堀田は車を運転しながら温泉旅館のオーナーに電話をかけた。スマホはカーナビのちょうど下あたりに固定され,スピーカーフォンから聞こえる呼び出し音が車内に鳴り響いた。
「もしもし……俺だ。実は頼みたいことがあるだけど……。あぁ……わかってるって。金の話じゃない。あぁ……そうだ。三浦の件だ……。お前さんもあいつの身体を十分に楽しんだろ。俺がいないときにお前が三浦になにをしていたかなんて,想像がつく」
堀田の運転する車が市街地に出ると,いつもより注意深く車を走らせた。
「それでな……あいつもそろそろ限界だ。あぁ……水と食い物は与えてあるが,しばらく放置するつもりだ……。そこでだな……あのミイラみたいに痩せ細った身体をだな……あんたのとこの焼却炉で焼いて欲しいんだ。わかってるって……。大丈夫だろ,あんなにガリガリになってんだ。わかってる……山上を処分してくれた礼ならしっかりするって……」
ほとんど車の走っていない高速道路を静かに走りながら,会社へと運転した。
「あぁ……それと,面白いことを思いついたんだ。結衣のことは知ってるよな……あぁ……そうだ。いまじゃ文句婆とか呼ばれてる……。いま,うちの会社に本社から出向できてる若造がいてな,そいつが結衣のことを社内で聞いて回ってたんだ……。あぁ,そいつに結衣を抱かせたらどう思う……? だろ……お前も参加するだろ……? あぁ……お前好みの男だ……線の細い今時のイケメンってやつだ」
車がゆっくりと高速道路の出口に差し掛かったところで,急に加速しはじめた。堀田が慌ててアクセルから足を離しブレーキを踏んだが,スピードは上がる一方で堀田は必死にハンドルを握って車をコントロールしようとした。
異変に気付いた旅館のオーナーの声がスピーカーフォンから漏れていたが堀田はそれどろこではなかった。
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