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 本館の廊下で堀田が山上に追いついて声を掛けた。山上はにやけた顔を隠そうともせず,勝ち誇ったかのように堀田のことを見た。 「いやぁ~まさか,堀田さんがねぇ……。あれって,競合会社に転職した三浦って男でしたよねぇ……。問題があった後に調べたリストに載ってましたねぇ。あの男が持って行った会社の情報がどれほどのものかは知りませんが、やっぱり競合他社への転職は問題ありますよねぇ。残された社員にも影響はあったんでしょうねぇ。ん? ということは,例の横取りの件は,裏で堀田さんも絡んでたってことですかねぇ……」  山上の陰湿な口撃が始まった。ネチネチと堀田を攻め続け,自分が上位にいることを強調した。 「それにしても,随分と気持ちの悪いものを見ちゃいましたよ……。やっぱり,あれですか? 堀田さんは家族がいるのに,男もいけちゃうって,偽装結婚みたいな感じですか?」  からかうように堀田の前を歩きながら,行くあてもないまま廊下を歩いた。途中で結衣が双子の子供たちとクレーンゲームをしているところに出くわしたが,山上が嬉しさのあまり軽く手を振ってやり過ごした。 「堀田さんは,小林も狙ってるんですかぁ? 随分と可愛がっているように見えますが。堀田さんがあの嫁と双子から小林までも奪い取ろうなんて思ってたら……僕はもうこの会社の……この土地の人間を誰も信じられなくなりますよぉ……」  下品な笑いを堀田に向けて,からかった。 「それにしても相手が男とはねぇ……。しかも競合他社にうちの情報を持って行った男とねぇ……。これは,やっぱり本社に報告しないといけませんよねぇ……」
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