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 会社では,役職者が会議室に集められ警察からの説明を聞いていた。  警察が気を使って謙一だけを外に出した。謙一を別室に連れて行くと,すでにそこにいた警察のお偉いさんが山上の遺体が発見された状況を注意深く気を使いながら謙一がパニックを起こさないように伝えた。  謙一はなにを応えてよいのかわからず,黙って聞いていた。結衣がどうして山上の遺体がある場所を知っていたのか想像すらできなかった。そもそも結衣の言葉で警察が動くのも疑問だった。そして自分が容疑者として疑われているのか心配になったが,警察の対応を見る限りそういった感じでもなさそうだった。  その頃,会議室では警察官から詳しい話を聞かされた役職者達が軽いパニックになっていた。結衣が嘘をつくはずもなければ,山上がドラム缶に入れられていることを知る術もないことは誰もが疑いようがなかった。  誰かが結衣に教えたとしか考えられなかったが,そんなことをする理由が思い当らなかった。警察からの説明を受けても,結衣が山上の遺体があった場所を知っていたことと,なによりも山上が誰かに殺されたという事実を現実として受け入れることができず,皆ピンとこなかった。  これが殺人事件であることと,ずっと入院している結衣が山上の遺体が隠されている場所を知っていたのは確かだった。
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