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栗林が窓から外を見ていると,まったく気配を感じさせずに真後ろに結衣が立っていた。一瞬で緊張が高まり窓に映った結衣と眼が合った瞬間,膝の力が抜け崩れるようにそのまま床に転がった。
「え……? なに……? どうゆうこと……?」
状況を把握しようと,できるだけ冷静に部屋を見たが,黙って立っている結衣の姿しかなかった。
「結衣さん! あなた,大丈夫なの? 杖もなしに立てるの? 意識はあるの?」
次の瞬間,栗林の両脇に双子がしゃがみ込んで悲しそうな眼で栗林を見ていた。結衣は虚ろな眼をして栗林を眺めていたが,ゆっくりと引きつるような笑顔を見せた。
「一真と翔真……わたしの可愛い子供たち……最近こうやって,わたしに会いに来てくれるの……」
「え……?」
栗林の眼に一真と翔真の姿が映った瞬間,まるで眠りに落ちたかのように栗林の身体が冷たい床の上で横になった。
「ごめんなさいね……息子達があなたは私によくないって……」
そう言うと,結衣もまた意識を失うようにして床に崩れ落ち,栗林の横で横たわった。
二時間ほどして看護師が部屋を訪れた時に,二人が床に倒れているのを見つけ,慌てて処置を行ったが栗林はそのまま還らぬ人となった。
警察では,まったく外傷のなかった栗林の遺体から,栗林が結衣に外の空気を吸わせようと窓を開け,意識のある結衣を窓まで連れて行ったときになんらかの事故が起こり倒れた栗林の上に結衣が覆いかぶさるようにして倒れ,打ち所の悪かった栗林は運悪く亡くなったのだろうと結論付けた。
その後,結衣が意識を取り戻すまで約二週間かかり,栗林の件は不幸な事故として片づけられた。
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