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 その後,何度か手術を受ける度に入院を繰り返していたが,結衣は自宅に帰され介護を受けながらリハビリを続けることになった。  謙一は献身的に結衣の介護を行っていたが,半年も経つと介護疲れのせいで飲酒量が増え,日に日に体調を崩していった。  そしてある日,謙一が結衣の側でうたた寝をしていると二人の周りと楽しそうに走り回る子供たちの気配を感じた。  疲れて幻聴でも聴こえてきたのかと思い,部屋の中を見回すが謙一と結衣以外は誰もおらず,一真と翔真が元気に走り回っていたときのことを思い出して結衣の手を握りながらさめざめと泣いた。 「誰がこんなことを……まだ幼い子供達に……なんて,ひどいことを……」  謙一のなかでは時間が完全に止まってしまっていて,一真と翔真を失ったことも,結衣が寝たきりの介護がないと生きていけないことも受け入れられないでいた。 「俺が一体何をしたっていうんだ……子供達になんの罪があるっていうんだ……なんで結衣がこんな目にあわなくちゃいけないんだ……」  謙一はベッドで横たわり声を掛けても応えてこない結衣の手を握りしめながら,自分達がこんな目にあっていることを呪った。
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