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「辞めれば良かったのに」
昨日の早朝、私の高校時代の友人である波瑠が自殺未遂をした。私が病院に駆けつけた時、彼女ははっきりと意識があり、だがぼんやりとした、虚ろな双眸をこちらに向けていた。
私が近づくと、波瑠は小さく手を振った。その手首には包帯が巻かれている。
私は彼女にかける言葉が見つからず、しばらくの間病室には何とも言えない気まずい沈黙があった。
「……ごめんなさい」
ぽつり、と彼女はどこか遠くを見たまま、小さな声で一言そう言った。そしてはっとしたように私と視線を合わせ、まるで何かを誤魔化すように、やや早口で喋りだした。
「なんか恥ずかしいね。自分でもなんでこんなことしたんだろうって思うもん。あの時の記憶あんまないっていうか、夢の中みたいだったっていうか、うーん……どうかしてたんだと思う。今は大丈夫。めっちゃ元気だし、ちゃんと落ち着いてる。まあ、あの職場に戻るのは嫌だけど、多分なんとかなると思う。大したことじゃないし、よくある一時の気の迷いっていうか……ね?」
私は黙って聞いていた。
「なんか……大変だったね」
そんなことしか言えなかった。
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