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相手の正体がわからないので先にそれを問い詰めたい晴人だったが、何となくここは一先ず相手の問いに素直に答える方が良い気がした。
「……黒執レンの自宅って、ここで合ってますか。俺、同じクラスなんですけど」
長身オネエの迫力に負けじと、晴人は真っ直ぐに相手を見据えて答える。
「レンの……クラスメイト……?」
つけ睫毛で飾られた目を丸くして呟いた彼(彼女?)は、みるみるその顔を輝かせると、不意にガシッと晴人の両手を取って握り込んできた。
「あのレンを! クラスメイトが訪ねて来るなんて…!!」
「あ、あの……手、痛いんすけど……」
「何てことなの、こんなこと初めてよ……! レンの家はここで合ってるわ、さあどうぞ!」
晴人の訴えには全く耳を貸すことなく、黒髪の彼はそのまま晴人の手を引いて門を潜り、ズンズンと庭を突っ切っていく。
「だから手、痛いって! ていうかアンタこそ一体誰なんだよ!?」
玄関の鍵を開けた彼は、そこで漸く気づいたように「アラ、ごめんなさい」と晴人の手を解放し、玄関ドアを開いて恭しく一礼して見せた。
「ようこそ、黒執家へ。ワタシはアリシア。レンは、ワタシの甥っ子なの」
「甥っ子? ……親は?」
「レンの親は訳あって多忙でね。おまけに海外暮らしなものだから、ワタシがこうして時々レンの世話役を仰せつかってるのよ」
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