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「ワタシはこの家の前で立ち尽くしてたお客様を招き入れただけ。誰かさんが部屋にこもって来客を無視してる所為でしょ」
「家の前でって……誰だよお前!? 何しに来た!?」
再び晴人に向き直ったレンが、鋭い眼光で睨みつけてくる。
入学式の日も近寄り難い雰囲気はあったが、どちらかというともっと儚げな印象だっただけに、あまりのギャップに頭が若干追いつかない。
しかもたった一日とはいえ顔は合わせているのに、晴人の存在はレンの記憶には全く残っていなかったことに、ほんの少しがっかりもした。
「……俺は高坂。高坂晴人。お前のクラスメイトだ」
「クラスメイトって……学校とか、もう関係ないし」
「関係ないって何だよ? お前、担任の谷川先生に何かしただろ。お前の欠席理由聞いたとき、明らかに先生の様子がおかしかった」
「仮にそうだったとして、お前に何の関係があるんだよ? 俺はお前のことなんか知らない。学校ももう行かない。そもそも入学式だって、アランが行け行けってうるさいから、嫌々行っただけだし」
そう捲し立てて、レンはふいっと顔を背けてしまう。
晴人は大和に妙な誤解を受けるくらい、レンのことを考えていたというのに、そのレンから「知らない」と呆気なく突き放されて、胸の奥が鈍く軋んだような気がした。
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