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それだけなら特別大して記憶にも残らないのだが、彼の容姿は、絵画や漫画の中から抜け出してきたのではと思うくらい、とてつもなく小綺麗な顔立ちだったのだ。
長い睫毛が映える折角の綺麗な目元が隠れそうな程伸ばされた、少し癖のある髪はプラチナブロンド。同じように色素の薄い瞳は銀色にも、角度によっては金色にも見えて、日本人以外の血が入っているのだろうということは、聞かずともわかった。
ただ、色白の肌はもう白いという域を通り過ぎて、若干青白くも見え、それが何となく近寄り難い印象を醸し出していた。
彼自身からもどことなく他人を寄せ付けないようなオーラを感じて、晴人を含め周りのクラスメイトたちは、皆その人形のような美少年を遠巻きに眺めることしか出来なかった。
終始周囲の視線を釘付けにしていたレンだったが、そんな彼は入学式の真っ最中に、突然派手にぶっ倒れたのである。
衝撃の出来事に、入学式は一時中断。式が行われていた講堂は、一転して騒々しい空気に包まれた。
恐らく晴人だけでなく、クラスメイトやひょっとしたら他のクラスの生徒さえも、彼のことは鮮明に覚えているのではなかろうか。
顔が青白いのは貧血だったんだろうか、と晴人もそのときは思ったのだが、まさか彼を見るのがその日で最後になろうとは、誰も思っていなかっただろう。
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