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さっきから会話にイマイチついていけない晴人の前で、「じゃあ仕方ないわね」とアリシアが肩を竦めて、持っていた荷物の中から保冷剤に包まれたタッパーを取り出した。
一体何が入っているのかとアリシアの手元を覗き込み、直後に激しく後悔した。
タッパーに入っていたのは、ついさっきまで生きていたものから抜き取ってきたのかと思えるほど生々しい、文字通り血も滴る臓器だ。
思わず「うっ」と口元を押さえて顔を背ける。テレビだったら間違いなくモザイク物だ。
「な……何だ、それ……?」
「心臓よ」
「心臓!?」
ケロリとした顔で答えたアリシアが、そのタッパーを躊躇いなくレンの前に差し出す。
「え、おい、心臓って誰の……!? ていうかそもそも、そんなモン食って大丈夫なのか!?」
「安心して、人間のじゃないわ。それにこの子の場合は、こんな物でも食べないと血が摂れないのよ。ホラ、週に一回なんだからちゃんと食べなさい」
差し出されたタッパーを、レンは全力で拒絶している。これはさすがに、晴人でも食べろと言われたら間違いなくレンと同じ反応を返してしまうだろう。
「俺にはよくわからないけど、サプリ大量に飲んでるみたいだし、何も生の心臓なんか食わせなくてもいいんじゃないのか?」
思わず二人の間に割って入った晴人に、アリシアは困惑したように溜息を零した。
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