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ここまで血を毛嫌いするレンも、好みの血を持つ相手がもし現れたなら、そのときは喜んでその血を吸うのだろうかと思うと、また腹の奧がドロリとした感情で重くなった気がした。
頑固者、とレンの頭を軽く小突いてから、アリシアはやれやれとばかりに首を振って、改めて晴人の前へとやってきた。
「折角訪ねてきてくれたのに、我が儘な甥っ子でごめんなさいね」
そう言って晴人の顔を見下ろすアリシアと目を合わせた、その瞬間。
「………っ!?」
身体の自由が、一切きかなくなった。
自分の身体がまるで石にでもなったみたいで、指一本動かすことさえ出来ず、声も出せない。出来ることと言えば、辛うじて息をすることと、真っ直ぐに晴人を見下ろすアリシアの目をただジッと見つめ返すことだけだ。
(何だコレ……!? 一体どうなって……!?)
心の中で必死に叫んで、何とか抵抗を試みるが、晴人の身体は硬直したままだった。
一体何がどうなっているのかわからない。そこで初めて、アリシアたちが明らかに人間とは違う、『吸血鬼』という異質な存在であることを思い知らされた気がした。
自分では全く動かせない背中を、冷えた汗が一筋伝い落ちていく。
そんな晴人を見つめるアリシアの瞳が、ほんの少し細められた。
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