ベジタリアン・ヴァンパイア

295/303
前へ
/320ページ
次へ
 まだまだ昔のような関係ではないけれど、月日が経てば、少しずつ互いのぎこちなさも薄れていくだろうか。  クリスの身体を支えて、レンはクリスと共に玄関の扉を潜る。その二人の背を、月の明かりが優しく照らしていた。   ◆◆◆◆◆  脚の傷もすっかり癒え、部活を終えた晴人は、黒執家に向かっていた。  明日からは期末テスト前の部活動禁止期間に入る為、サッカー部も暫く休みになる。  レンも今ではすっかり一年A組の一員に戻っており、そこそこゲームが好きな大和とは時々新作ゲームの話をするようにもなっていた。  そんな学校生活の何気ない会話の中で判明したのだが、レンは本やゲームには相当詳しい一方、テレビを見る習慣がなく、映画も全く観たことがないらしい。  夏休みに入ったら、レンを外に連れ出す意味も込めて映画にでも誘ってやろう、などと考えながらレンの屋敷までやってきた晴人は、門を潜ってすぐ、視界の隅に映った人影に、思わず我が目を疑った。 「黒執……!?」  いつもなら、学校から帰宅すれば必ず自室にこもってゲームをしているレンが、一人で庭にしゃがみこんでいる。  一瞬、具合でも悪いのかと慌てて駆け寄った晴人だったが、よく見るとレンの手には軍手が嵌められ、更に片手には園芸用のスコップが握られていた。 「ああ、おかえり」     
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1036人が本棚に入れています
本棚に追加