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まだまだ昔のような関係ではないけれど、月日が経てば、少しずつ互いのぎこちなさも薄れていくだろうか。
クリスの身体を支えて、レンはクリスと共に玄関の扉を潜る。その二人の背を、月の明かりが優しく照らしていた。
◆◆◆◆◆
脚の傷もすっかり癒え、部活を終えた晴人は、黒執家に向かっていた。
明日からは期末テスト前の部活動禁止期間に入る為、サッカー部も暫く休みになる。
レンも今ではすっかり一年A組の一員に戻っており、そこそこゲームが好きな大和とは時々新作ゲームの話をするようにもなっていた。
そんな学校生活の何気ない会話の中で判明したのだが、レンは本やゲームには相当詳しい一方、テレビを見る習慣がなく、映画も全く観たことがないらしい。
夏休みに入ったら、レンを外に連れ出す意味も込めて映画にでも誘ってやろう、などと考えながらレンの屋敷までやってきた晴人は、門を潜ってすぐ、視界の隅に映った人影に、思わず我が目を疑った。
「黒執……!?」
いつもなら、学校から帰宅すれば必ず自室にこもってゲームをしているレンが、一人で庭にしゃがみこんでいる。
一瞬、具合でも悪いのかと慌てて駆け寄った晴人だったが、よく見るとレンの手には軍手が嵌められ、更に片手には園芸用のスコップが握られていた。
「ああ、おかえり」
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