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相変わらず憎まれ口の方が遥かに多いレンだが、最近は「ありがとう」や「ごめん」といった言葉は、小声ながらもちゃんと口にするようになっていた。何でも、ジェドがクリスに物言いを指導していた際、巻き込まれる形でレンも教育された結果らしい。
そのクリスとジェドも、つい三日前、漸く怪我も完治して、無事帰国の途に着いた。
「もしかして、ジェドにガーデニングの指導も受けたのか?」
「そんなワケないだろ。ジェドは庭師じゃない」
晴人の問いに素っ気なく答えながら、既に充分耕された土へ、レンは早速アリシアが持ってきた苗を丁寧に植えていく。
「それ、何の苗なんだ?」
「野菜」
「野菜って、何の?」
「色々。取り敢えず、今の時期に合ったヤツ」
「何でいきなり野菜なんか育てようと思ったんだよ? 部屋からもまず出てこないお前が庭に居るから、何かあったのかと思った」
「クリスたちが帰国しちゃったから、何だかんだで寂しいのよね?」
揶揄うアリシアを「そんなんじゃない」とジロリと睨んで、レンは随分と慣れた手付きで次々に苗を植えていく。
「さて、ワタシは頼まれてた買い物も済んだし、食事にでも出掛けてくるわ。あとは若者同士でごゆっくり~」
ヒラヒラと晴人たちに手を振って、アリシアは長い髪を靡かせながら門を出て行った。
「……で? 本当の理由は何なんだ?」
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