ベジタリアン・ヴァンパイア

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 アリシアが去ったのを見届けてから、晴人がレンに向き直って再度問い掛けると、苗の周りに土を掛ける手を止めてレンがポツリと零した。 「……枯れてたから」 「枯れてた? ……何が?」 「本家の畑」  そう言って、レンは再び手を動かし始める。 「本家の畑って、お前向こうで畑仕事なんかしてたのか?」  引きこもりゲーマーのレンと農作業がどうしても結びつかず、晴人は予想外の答えに目を丸くする。 「畑仕事ってほどじゃない。ただ、自分が食べる分をこっそり育ててただけ」 「自分が食べる分って……ああそうか、向こうに居た時はお前まだ───」  血が飲めなかったからだ、と漸く気付く。だからこんなにも、苗を植える作業が手慣れているのか。 「でもお前、こっちでは野菜とか全部ネットで頼んでなかったか?」 「本家じゃ、宅配便とか全部使用人が受け取るようになってるから、通販なんか利用出来なかったんだよ」 「今は通販出来るのに、わざわざ育てるのか?」 「………」  晴人の質問にふと黙り込んだレンは、最後の苗を植え終えると、畝に等間隔で並んだまだ小さな苗たちを見詰めて目を細めた。 「……誰にも世話されずに枯れてた畑が、寂しそうだったんだ」  そう呟いたレンの声音の方が寂しげで、晴人は反射的にレンの身体を強く抱き寄せていた。     
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