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勢いで尻もちをつく形になったが、制服が汚れるのも構わず、晴人は驚いた顔のレンを腕の中に抱き込む。
何となく、レンは枯れた畑と自分を重ね合わせているような気がしたからだ。
「おっ、おい……! いきなり何だよ、服汚れ───」
「お前は、俺に会わなかったら寂しかったか?」
「え……?」
あちこち土だらけだからと抵抗していたレンが、ピタリと動きを止める。
「……そんなの、もう出会ってるからわからない」
「そこは『寂しい』って言うとこだろ」
相変わらず素っ気ない答えを返してくるレンの、薄らと土のついた頬を軽く抓って晴人は笑う。思わず抱き締めたくなるようなことを言ったかと思えば、次にはもう愛想の無い発言をする。
死にそうになりながら、晴人に会いたいと遥々遠い異国から戻ってきて、おまけに煽情的に血を求めてきたかと思ったら、少し肌に触れただけでも照れて途端に悪態を吐いたりするのだから、この吸血鬼は本当に一筋縄ではいかない。
「お前って結構罪作りだよな」
「……? どういうことだ?」
「そうやって、自覚してないとこだよ」
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