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GWに入る前から、晴人はずっと大事なことを忘れているような気がしていて、けれどいくら思い出そうとしても、決して思い出すことが出来ずに居る。
一度はもう考えても無駄かと、思い出すことも諦めかけていたのだが、今大和の言葉を聞いて、再びそのもどかしい気持ちが蘇ってきた。
自分は一体何を思い出そうとしているのだろう。
(大和が言ってた、黒ナントカってヤツに関係あるのか……?)
そう思った瞬間、まるで晴人の思考を遮るようにズキリと鋭い頭痛が襲って、晴人は小さく呻いた。
「おい、晴人?」
こめかみを押さえて顔を顰める晴人を、大和が心配そうに覗き込んでくる。
目の前の大和に視線を移すと、痛みは何事もなかったように治まった。まるで誰かに、記憶や思考をコントロールされているみたいで気分が悪い。
「何か顔色悪ぃけど、大丈夫か?」
「……何でもない。ちょっと一瞬、頭痛がしただけだ」
まだどこか心配そうな顔を向けてくる大和に無理矢理笑顔を返して、晴人は遠くなった空席の存在から無理矢理意識を逸らすことにした。
(……一体、何がどうなってるんだ……)
窓の外は清々しい青空が広がっているというのに、晴人の頭の中は晴れることのない濃く重い靄に覆いつくされていた。
「……ただいま」
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