番外編 SWEET COLORS

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 不意に貫かれた衝撃からか、呆気なく晴人の首筋から口を離して悲鳴を上げたレンの口許から、鮮血の粒が散る。僅かでも苦痛を和らげてやりたくて、レンの顔中に口づけながら舐め取った自身の血は、晴人にはやはり美味いとは思えなかった。それよりも、レンがしきりに零す涙の方が余程甘い。 「んぁっ、も……ゃ、だ……っ、全然、上手く、出来ない……っ」  嗚咽に胸を喘がせながらレンが絞り出した言葉に、晴人は思わず動きを止めて目を瞬かせる。 「上手く出来ない……?」 「……だから、『わからない』って、ぁっ、言った……だろ……っ」  ボロボロ涙を零しながらも、レンが睨むように晴人を見上げてくる。  ……もしかして、レンの言う「どうしていいのかわからない」というのは、接し方だとかそういうあやふやなことではなく、晴人との行為そのものを言っていたのだろうか。 (だから、騙すみたいな真似してまで逃げようとしてたのか)  先に進みたいと思っていたのは晴人だけではなかった上に、レンはレンなりに、体験したことのない行為への不安としっかり向き合ってくれていたことを知って、そんなレンに全身で想いをぶつけてやりたい欲求を、晴人はどうにか抑え込んだ。 「……上手くなんか、出来なくていい。現に俺だって余裕無いし、何よりお前が相手なら、それだけで気持ちいいんだよ」  わかるだろ、と晴人の熱を知らしめるように、一度だけ軽く腰を揺すってやると、また一筋涙を零したレンの中がキュウ…と応えるように晴人を締めつけた。     
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