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けれど、これだけ欠席が続けばさすがにクラスメイトも皆気にしているのだが、担任からはレンに関する報告は特になく、むしろ黒執レンという生徒など最初から存在していないのだと言わんばかりの無関心ぶりなのだ。
そのことが、晴人には不思議で仕方がなかった。
お陰で、「ヤバイ事件に巻き込まれたらしい」だとか、「この学校の七不思議の一つに似たような話がある」だとか、クラス内では徐々に彼に関する噂話がエスカレートし始めている。
何か、皆には話せない事情でもあるのだろうか。
肝心の本人が居ないところであれこれと考えていても答えが出るはずもなく、晴人がぼんやりとレンの席を眺めている間に、気付けば授業もHRも終わっていて、教室内は放課後の喧騒に包まれていた。
「晴人、部活行こーぜ」
学校名の入ったスポーツバッグを肩に引っ掛けて、晴人の椅子の脚を軽く蹴飛ばしてきたのは、中学から付き合いのある本城大和だ。中・高と、共に同じサッカー部でもあるので、ここ数年では家族以外で晴人が一番時間を共にしている相手だ。
いつでも飄々としていて掴みどころがないが、話しやすいし悪いヤツじゃない……と、晴人は思っている。
「ああ……悪い、すぐ用意する」
慌てて広げっぱなしだった教科書を仕舞い、荷物を纏める晴人に、大和が呆れた様子で肩を竦める。
「なにボーッとしてたんだよ」
「いや、ちょっと考え事してた」
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