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目の前の席の相手が、もうひと月近くも欠席しているから? それなら、席が離れていれば特に気にならなかったのだろうか。
入学式の日に見た、レンの容姿を思い出す。
あれだけ端麗な容姿で、周囲の視線にも気付いていたはずなのに、それらを頑なに拒み続けるような彼の雰囲気と、危うい青白さ。
(……あんな強烈なの、忘れないだろ)
何故そう思うのかはわからないが、恐らく自分とレンの席が例え教室の両端に離れていたとしても、自分はきっと、レンのことが忘れられなかった気がする。
……大和は、どうなのだろう。
ふとそう思って、晴人は「なあ」と隣を歩く大和を見た。
「お前……黒執のこと、何か聞いてるか?」
「クロトリ?」
大和は一瞬、誰?、と言いたげに首を傾げた後、少し間を置いてから「ああ! あの不登校のヤツ!」と手を打った。彼の中では、レンは『不登校』という扱いらしい。
「そーいや一ヶ月近く学校来てねーのに、谷セン何も言わねーよな。なんか大人しそうな感じのヤツだったし、式ンとき倒れたのが気まずくて登校し辛いんじゃね? その内ひょっこり来るンじゃねぇの」
さほど興味も無さそうな大和の口振りに、晴人の胸の中には得体の知れない靄のようなものが広がっていく。
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