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番外編 SWEET COLORS
「あー、くそ! また負けた!」
苛立ちをぶちまけるように、ガン!とデスクへ拳を叩き付け、PCに向かったレンがモニターを睨みつけながら悔しげに叫ぶ。
「……二十九敗」
かれこれもう二時間ほど放置されている晴人がベッドからボソリと呟くと、ヘッドホン越しにも耳聡く聞き取ったらしいレンが、ジロリと肩越しに睨みつけてきた。
「まだ二十八敗! ていうか数えるなよ、ムカつくから」
そういうお前も数えてるだろ、という呟きは心の中に留めて、晴人は再びPCモニターに向き直ったレンの背中へ小さくため息を吐いた。
高校も夏休みに入り、晴人は部活で毎日のように学校へ通っているが、レンはというと、まためっきり以前のような引きこもりゲーマー生活に戻ってしまっていた。
ただ一つ変わったことと言えば、順調に成長している庭の野菜の手入れだけは、怠っていないところだろうか。少し前にレンが庭に植えたミニトマトの苗は立派に育っていて、今は艶やかな赤い実を毎日沢山実らせている。
そんな野菜の成長ぶりとは裏腹に、晴人とレンの関係はというと、こちらは悲しいかな一向に進展がない。
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