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スタートの笛の音が鳴り、マラソンがスタートした。
俺は、始めこそ20位だったが、自己練習でつけた得意の「後半の追い上げ」で、どうにか2位となった。
しかし、1位は、やっぱり南川だった。
ラスト1キロの地点で、
「このままだと一位は、取れない」と感じた一瞬で、俺は動いた。
30メートル差が開いていたが、俺のわずかな力と負けん気で、その差は20、10、5と縮まっていった。
ゴールまで、あと400メートルのところで事件は起きた。俺と南川が、並んでいる状態。南川も、俺もいい位置について走りたいので、ポジション争いで、体がよく当たる。南川が、だんだんポジション取りをしなくなって来たので俺は、「ここがチャンス」と思い、南川と並んでいた状態を俺が、覆したのだ。しかし、この時、間違えて、俺の肘が南川の溝に直撃したのだ。
南川は、キツそうにしながら俺に「助けて」と口にした。
助けに向かおうとしたが、「もし、助けたら優勝はないかも」と思うと、どうしても一位になる欲が勝手に俺の体を南川の元へ向かわせなかった。
結局南川を、助けなかった俺は、一位になることができた。
しかし、今の罪悪感が溢れる俺には、とても欲しかった1位よりも、大切な物を手放していることに気がつき、その物を拾いに行きたいと後悔する思いの方が、脳裏に焼き付いていた。
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