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「胃潰瘍ですね。」
かかりつけの大学病院。
いつも僕に優しくしてくれる先生が真剣な表情でそう告げた。
会社で倒れてしまったらしい。
今でも激しい腹痛と喉痛が襲ってくる。
あの夢のような痛みだ。
救急車に運ばれたらしいがそこらの記憶がまるで無い。
余程疲れていたんですね、吐き疲れて寝てしまうなんて。
僕は寝不足でぼやけた視界のまま、先生の尖った瞳を見た。
あれ。今日はすごく怒ってる。何でだろう。
「無茶しすぎですよ。会社の人も仰っていました。最近よく働いているから良いけれど体調管理もきちんとしなければ意味がないですって。」
「…ごめんなさい。」
「まったく。もういい大人なんですから。ちゃんと食べて寝ることくらい当たり前にしないと。生活習慣病は大変ですよ。今の内に早く改善したほうがいいです。聞いてますか?」
「あ、は、はい。」
「しっかりご飯食べてますか?ちゃんと寝てますか?見るからにどちらも出来ていませんね。もう入院しましょう。」
「えっ…!?いやいや、入院はちょっと…」
「駄目です。これ以上働いたら身体が壊れてしまいます。仕事が大事なのもよく分かりますが、貴方はそれよりももっと自分を大切にしないと!」
「…あれ?」
何で僕が仕事大好き人間みたいな見解になってるんだ?
可笑しいよな。
僕は仕事が嫌いで、地獄だと罵っていて、それなのに仕事が大事?
無茶してる?
俺って何でこんなに仕事のことを気にかけているんだろう。
大嫌いなのに。
もう嫌なのに。
見たくもないのに。
それでも毎日会社に来ているのは。
仕事をしているのは。
何故?
「…先生。僕、どうして…」
「ん?何ですか?深瀬さん。」
「…いや、すみません…なんでもありません。」
「何かあったらすぐに言ってくださいね。とりあえず検査が終わったので個室に移動しましょう。御家族やお友達と連絡は取れますか?」
「は、はい…」
「ニ週間分のお着替えと日用品を持ってきて貰いなさい。貴方の場合長期治療が必要です。後はこちらが受付しますから、今はたっぷり寝てください。まだ日中なので寝難いかもしれませんが、無理矢理でも睡眠を取ってください。またお腹が痛くなったり吐き気がしたらナースコールを押してくださいね。」
「はい…すみません。」
「謝ることありませんよ。これから頑張って健康な身体を作りましょう!」
「…はい。」
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