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「…まぁ、無理だろうね。いきなり頭が可笑しいだなんて言われても、今まで常識人ぶっていた君には理解することも難しいだろう。君は頑張ったよ。毎日毎日。嫌な素振りを見せながら、それでも文句一つ言わずにね。その姿勢は人間として大変素晴らしいと思う。でも、僕の目には気が狂った君しか見えない。」
「…」
「今なら分かると思う。聞きたいことがあるんだ。ねぇ。」
君の本当の願いは何なんだい?
頭を抱えた。
割れるように痛い。
なんだ、何なんだこの言葉の羅列は。
ただの侮辱とは言い難い。
僕を苦しめるために生まれた言葉は意図的に首を絞め、酸素を閉じる。
危機感だ。命への危機感。
肩を上げ下げしながら息をして、必死になって生にしがみつく。
嫌だ。
怖い。
死んでしまう。
何がしたいだなんて考えたこともなかった。
僕には欲望を叶える権利なんか無いから。
無いと思っていたから。
なのになぜ、この人は。
俺の幸せを願うような。
そんな物言いをするんだろう。
赤の他人であるはずなのに。
どうして。
「…」
僕の、本当の願い。
今僕が叶えたいこと。
上司に怒られるでもなく、彼女に会いたいでもない。
そんな願い事。
叶うわけ無いと思っていた。
そんな事できないと何処かで決めつけていた。
願っちゃいけないとも思っていたのに。
でも、もしも叶うなら。
我儘だと思われるかもしれないけど。
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