#6 新たな命

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「僕、頑張るから。また会えたら遊ぼうよ。」 「子供かよお前は。」 「これからそうなる予定。」 「…音楽性の話か?まぁ、初心に帰るのも悪くはない案だ。好きにやってみろよ。」 そう言うと彼は櫂を手にとって会社とは真逆の方へゆっくりと舟を漕ぎ出した。 周りは真っ黒な液体で染められ一寸動けばちゃぷりと音を立ててしまうくらい満ち溢れていたのに、いつの間にかその闇は薄れ、浄化され、透明なただの水になっている。上を見上げればドス黒く濁る雲の中、一筋の黄色い閃光が垣間見えた。 あの光がこの暗闇を消してくれているのか。それは僕にとって希望の道途と言えるだろう。 「着いたぞ。」 「ありがとう。」 「頑張れ。応援してる。」 「うん。頑張る。もう諦めないよ。」 突き出された拳を右手の拳で突き返すと、彼は分かってるじゃねぇかと言ってくしゃりと笑った。 僕にもそんな顔出来るんだ。 そんなどうでもいいことを思っている間に、その視界は一転し喧騒ざわめく大都会の中心へと切り替わる。
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