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「醒めない夢を見たくはないかい」
耳元で誰かが囁く。
甘ったるい誘惑の声。
常日頃重く感じる体に重さに加担され内臓が潰されそうになる。
苦しさにたまらなくなって上に乗っている見えない何かに退いてくれと声を絞り出すけれど、どうやら相手には伝わっていないようだ。
胃袋の中身が滲み出して腸壁が抉れるような感覚に陥り、自分の汚らしい声は苦しさに喘ぐ度金切り声へと変化する。
あぁ。
もういっそ殺してくれ。
こんなに苦しいのは嫌だ。
痛いのは嫌だ。
頬に生暖かい液体が伝った。
どこかしらの骨が折れているのは確実である。
息をするのも間々ならない状態。
非常に危険だ。
だからといってこんな闇の中で誰かが助けに来てくれるなんてことはとっくに諦めているのだが。
「君にはそんな悪夢がお似合いさ。」
ここで一生苦しめばいい。
僕が何をしたって言うんだ。
勘弁してくれ。
謝罪の一言にも応じない悪魔のような人物に残酷だと吐き捨て、僕の意識はゆっくりと闇へ溶けていった。
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