流れのケンちゃん

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ケン「え?ハナさんも?やっぱり外国へ?」 ハナ「なん(笑う)なんでうちが。外国なんてミツといっしょに釜山に行った きりや。そこからフェリーですぐや。そうじゃなかよ…ヤクザや」 ケン「ヤクザ?」 ハナ「うん。ヤクザのヒモにいいように…あ、いや…ヤクザに脅されて、いっ ときどげんもこげんもならんようになったちゃ。なさけのうて、自分も人も、ふるふる(心底)好かんようになったったい。だからケンちゃんといっ しょよ」 ケン「ふーん…でもハナさん、なんで、なんでヤクザなんかに?聞いてよけれ ばだけど」 ハナ「みっとものうて話しにくかあ。ばってんあけなんこに云いますね、ケン ちゃんなら……昔の話やけど、うちら母子家庭で貧しかったんよ。ばってん、ミツとおっかさんと、三人で一所懸命暮らして、幸せやった。うちも学校かよいながら内職してな、おっかさん助けよったんよ。学校の友達もようしてくれて…苦しかったけど、あんときがいっちゃんよかった」 ケン「学校って、高校?」 ハナ「ううん、中学や。柳川第三中。うちは中学しか出とらんたい。ケンちゃ んと違うてあたきゃあ学ありまっせん(軽笑)」 ケン「学校なんて。俺だって高卒止まりさ。で、それで?そのあとなんで…」 ハナ「おっかさんが男入れよった。おっかさんが勤めよった工場に東京から単 身赴任して来た男。東京に女房子供おるくせに独身ってごまかしくさって…おっかさんもうちらを思うてしたことやけろ、要はだまされたっちゃ。あの東京のあんぽす(ばかもん)が…家にお金一銭も入れんかった。おおかた女ばかり三人で、ハーレムとでも思いおったんじゃろ。おっかさんを手込めにしたばかりか、ミツにまで手出しくさって…」 ケン「まさか、ハナさん…」 ハナ「(うなずいて)刺しました。包丁出してな…(軽笑)ケンちゃん、嫌に なったやろ、うちが」 ケン「い、いや…しかしその男は、死んだ?…」 ハナ「なん、腕刺しただけや。けどうちの剣幕にむごう(たいそう)えずがり くさってたちまち家から出て行きよった。心底つののいた(気が晴れた)けど、後は少年院や。その後ころげてころげて、気づいたらヤクザのヒモの情婦(いろ)になっとったんよ。結局おっかさんと同じったい。親子でだまくらかされた(明るく笑う)。あ、いけん、風呂の湯!(立ち上がって台所の奥の風呂場に行く)」
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