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M(音楽)、ブリッジとして
柳川市内。柳川雛祭りの笛や太鼓の音。観光客らのざわめき声。川を跨ぐ橋の上で。
ミツ「あら、ケンさん…村田さんじゃありません?」
ケン「ああ、ミッちゃん!驚いた。来てたんだ。(軽笑)いやあ、ひさしぶり、元気だった?」
ミツ「ええ、元気。うちもびっくりや。東京へ帰りんしゃったとばかり…来て
くれたんですね、姉ちゃんのふるさとに」
ケン「うん。柳川の雛祭りに行こうって、ふるさとを見せたいって、ハナちゃ
んが云ってたから…ん?こちらは?お連れさん?」
ミツ「はい。あたきのよか男、杉浦徹(とおる)君です。九大の修士課程生で
す。卒業したらうちら結婚しますけん…」
ケン「(感激して)いやあ、そう!?(杉浦の手を握って)それはよろしく!
よろしく!九大のエリート!?結婚なさる?いやあ、よっかたあ…ハナちゃんが知ったらどんなに喜ぶか(涙ぐむ)」
ミツ「いやや、ケンさん、泣かんのいて(もらい泣きしそうになる)。姉ちゃ
んもうっすら知ってましたよ。亡くなる前、うちが話したから。うちが馬鹿やったけん…」
ケン「…(思い当たったように)ああ、そうか。(わざとらしく笑って)あ
あ、そう。ハナちゃんも知ってた。知らなかったの俺だけ(笑う)。とにかく、よかった、よかった(手を離す)」
杉浦「始めまして。杉浦です。ハナさんの墓前にはミツといっしょに報告に行
きましたけん。(ミツに)このおろかもんがなして伝えんかったとか…」
ケン「いやいや、徹さん、徹さん。責めないで。ミッちゃんの気持ちはよくわ
かる。あなたが大事なんだ。ね?このケンめも一過性の人物と捉えてくださって結構ですから。なんたって流れのケンって、ハナさんにのたまわれたくらいで(笑う)」
杉浦「なんば云いおっとですか。どうか末なごうお付き合いください。どうで
すか、立ち話もなんですから、どこぞの店でも入ってお茶しませんか。ぼくがおごりますから」
ケン「なんの。弟におごってもらってどうします。ここは不肖このケンが…え
ー、とは云ってもどこにお店が…おお、あそこがいい。橋のたもとの、あの梅が枝というお店。さあさ、御両人、お内裏様とお姫様。ハナちゃんじゃないけど、行こ、行こ」
ケン「いやや、ケンさんたら、うちらの手を引いて…」
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