流れのケンちゃん

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|登場人物| 村田ケン…25才、男。2年間世界を放浪して帰国。東京へ戻る途中福岡の割 烹料理店でバイトしている。内気な、詩人志向の青年。 ハナ…28才、女。店の同僚で勝ち気な性格。ケンの女になる。元極妻。 ミツ…24才、女。ハナの妹、OL。 杉浦…24才、男。ミツの婚約者。九大修士課生。 菊田…28才、男。店の鮨職人。気が短い。 勇… 45才位、男。店の客でヤクザ風。 客A…50才位、サラリーマン風。 客B…50才位、同右。 女性客…40才位。 通行人A…40才位のサラリーマン。 通行人B…35才位のサラリーマン。 梅が枝客A…60才位、男。 昭和51年の博多、天神界隈。深夜営業中(24時間営業)の割烹「屋形船」店内。店内のざわめき、男性客の酔いどれ声や女性客の嬌声、コップや皿の触れあう音など。 菊田「おーい、ケンちゃん、これ五舟に持ってて。握りね」 ケン「はい。あ、あと七舟からも催促来てます」 菊田「(伝票めくりながら)えー?七舟?おう、次あがる。順番や、順番。鮨 にぎるのワシひとりやけん、無理云うたらいけんよ」 ハナ「(OFFから)菊っちゃーん、鉄火まだ?十舟や、十舟」 菊田「なに?十舟?鉄火?判っとるばい!まったく。鉄火はハナちゃん、あん たやろ。のう、ケンちゃん」 ハナ「(何故かはにかみながら)すかん。それより菊っちゃん、さっき因縁つ けよった客、また帰って来たけん、気ぃつけんと」 菊田「(客の方を見ながら)あー、あいつか。ったく、このくそ忙しいのに… ほからかしとけ。それよりケンちゃんとハナちゃん、あんたら祝言いつあげんの?あ?」 ハナ「すかん…あ、あいた。あいつ来よった」 勇「(OFFから)おーう、兄ちゃん、さっきはこらえたがの、あらためてあ いさつに来たけん。ワシはの、勇っちゅうんや。ここいらじゃ顔の知れた男や。おまえみたいな若い衆に舐められたままで…」 菊田「わかった、わかった。おもて出え。また来たら承知せんってさっき云う とったやろ。おもて出え。ったく、この忙しいのに…(高下駄を鳴らなながらカウンターから出て来)おらおっさん、こっちや」 勇「お、おう…」
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