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カーン、カーン
固いものがぶつかり合う音が、もうすぐ日が沈むであろう夕焼けの中で響いていた。
一人の少年が、濁った川の側で石を打ち付けていた。
通りすがる人は音がするたびに少年に視線をやるが、特に気にも留めず通り過ぎていく。
何せ、ここを通る人にとってはもう日常となっている光景だからだ。
カーン、カーン
少年の傍らには手のひらサイズの石が山積みとなっていた。
魔法陣のような模様が描かれた緑色の布の上で石を打ち付けては、その山積みにさらに石を転がしていく。
その作業を少年は歯を食いしばって延々と続けていた。
少年にとってこの作業は、学校帰りの日課となっていた。
カーン、カーン
何度やっても変わらない音。
目の前で石を打ち付けあっても何も起こらない。
額から垂れる汗を拭い、少年は川の傍に無数に転がる石を適当に拾ってはまた打ち付ける。
___僕は、出来損ないなのだろうか。
そんな言葉がふと頭を過り少年の手が一瞬止まる。
けれど、すぐにその言葉を振り切るようにまた石を打ち付け始める。
例え学校で唯一魔法を使えない奴と馬鹿にされても。
何故こんな簡単なことが出来ないのだと先生に罵られても。
必ず見返して、ざまぁみろとあいつらを嘲笑ってやるためにも。
少年は、一心不乱に石を打ち付け続ける。
石の魔法を発動させるために。
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