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いつの間に傍に来たのだろうか。
黒いローブを身に纏い、腰を少し曲げながら太い木の杖をついたいかにも魔女といった風貌の老女が目の前に立っていた。
「おやおや・・・何かつらいことがあったのかい?」
少年の顔を見た老女は目を細めると、少ししゃがみ皺くちゃの手で優しく少年の頭を撫でた。
その優しさと温かさが直接心に沁み込み、少年はまた涙をポロポロと零した。
「・・・僕・・・・出来なくて」
初対面の人に言うことではないのに、その優しい手についつい弱音がポロリと零れていく。
「ああ・・・・魔法学の基礎かい」
老女は魔法陣の描かれたシートに目を止めると状況を把握したようで納得したように頷いた。
「皆できるのに・・・・僕だけ、出来ないんだ」
少年の目からは涙が零れ続ける。
弱気になっていた時に優しくされたものだから、塞き止めていたものが溢れだしていく。
「そうかいそうかい。それで責められたのかい。それはつらかったねぇ」
老女は頷きながら優しく言うと、また少年の頭を温かい手で撫でた。
「でもねぇ。使えないのは仕方ないんだよ」
その言葉に少年の心がずきりと痛んだ。
やっぱり、皆僕を蔑むんだ。
少年は涙を引っ込めると老女を睨みつけた。
老女は急に変わった少年の雰囲気に驚いたように目を見開いたが、すぐに納得したように「ああ、違う違う。馬鹿にしたんじゃないよ。相性が悪いと言いたかったのさ」と言ってにっこり微笑んだ。
「相性・・・?」
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