相性

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老女の言っている意味が分からず少年は首を傾げる。 「おや、知らないのかい?お前さんの学校の先生は知識が足りないんだねぇ」 少年より不思議そうな顔で老女は言い、山積みの中から石を一つ拾い上げた。 「石の魔法はねぇ。人同士の相性があるように、石にも相性があるんだよ。おまえさんは、このちんけな石ころじゃ力のバランスが取れてなくて相性が悪いんだよ」 老女はそう言うと、その石を石の山に放り投げた。 かつん、と山の中間に当たったかと思ったその瞬間。 山積みとなっていた石が一番下の部分で爆発が起きたかのように宙に舞い上がり、散ってそれぞれ川の傍に落ちて言った。 空中魔法と移動魔法を合わせて応用した魔法だった。 二つの魔法を同時に行えるのは一握りしかいない、と言われるほど難しい。 少年は驚いて立ち上がり元あった場所であろう所に戻っていった石を見渡し、老女に視線を戻した。 「・・・凄い。僕には到底できないや」 感動した後、すぐに自分の力量のなさを実感し少年は落ち込み視線を下げた。 「何を言うんだい。むしろ、アンタは学校で一番魔法の扱いが上手い部類に入るはずだよ?」 「え!?」 心底驚いている少年に老女はクスクスと軽やかに笑い「だから言ってるだろう。相性が悪いだけだって。多分持ってる力は私より強いくらいだよ」と言った。 少年がまだ信じられないといった表情をするので、老女は日の沈む方向を見た後「・・・ふむ。少しお家に帰るのが遅くなるかもしれないが。私についてくるかい?」と言い少年を見た。 少年も、もう暗闇になるには数時間もないだろう日の沈み加減を見たが、すぐに老女に視線を戻した。 「僕にも、魔法がちゃんと使えるようになるなら。行く」 強い決心をした表情に老女の頬が緩む。 その彼女の瞳は、いいものを見つけた子どもの様にとても嬉しそうに光っていた。 「さぁ、おいで。出来るだけ早く帰せるように急がないとねぇ」 楽しそうな老女は少年に手を差し伸べた。 少年は、躊躇うことなくその手の上に自分の手を重ねた。 この瞬間から、少年の人生が変わるのを望んで。
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