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慌てて俺から遠のく健太。
実際あの総長は加減を知らない。というか、クルミを素手で割れるぐらいの握力を持っており、超人的な人間だと誰もが口を揃えて言う。
あの人が加減して殴っても、それを受けた人間は真剣に受け身をとらないと病院送りだ…。
それでもあの総長の人柄は皆を和ませ、居心地のいいものにした。
惚れていたかと聞かれれば、健太にしても俺にしても、微妙な所だった。
健太は俺と総長の1個下の16才。本来、俺が副総長と思っていた所にこいつが転がり込んで、副総長の座を横取りしやがった。
飄々とした喋り口調で喧嘩も弱そうなくせに、攻撃が全然当たらないし、効かない。
さっき羽交い絞めしたのだって、実際こいつにとったらいとも簡単に抜け出せたはず。
だが、唯一総長にだけはお手上げらしい。
その総長も俺等にはじゃれた攻撃をしても、こいつには加減なしでやってる節がある。
だからか、余計にこいつは総長のお気に入りになった。何処に行くにも連れて行ったし、お互い言いたい放題の仲になった。そこに年上年下というの序列の尊敬は無く、同学年の親友のような関係に見えた。
だ・か・ら・だ!
何故、健太はその総長が死んだというのに、平然といられるのかが不思議でならない。
紅蓮の仲間が供えただろう花束の山を見ながら、横に立つ健太をじっと見た。その視線に気が付いた健太が俺に呟く。
「……実際、遺体が上がってないって事は、何処かで生きてますって…。殺してもあの人絶対死にませんから…。あの人"人間"じゃないですからね」
やけに真面目口調で言った言葉に引っかかりを覚えたが、こいつの気持ちも見えた気がした。
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