第一章ヤンキー娘、異世界に行く

21/177
前へ
/820ページ
次へ
その反応におもしろなって、ハンドルの所を指をさすとその付近を持っていた兵士が焦り出した。 余りにも焦っていたので、ちょっとやり過ぎたかと思い再度言い直す。 『嘘や。噛みつかんし暴れもせえへん。安心してええで。今はただの鉄の塊や』 その言葉に何度も何度も厳つい男が確認する様は、正直可愛かった。 バイクも積み終えてベルナールに疑問をぶつける。 『で、バイクが無くなった私はどうすんねん?』 目の前に一頭の馬が用意され、これに乗って着いて来いと言う。 目をぱちくりして無理、無理、無理と首を振ると、ベルナールは馬車に乗せられたバイクを見て、再度私に持って来た馬を見た。そして私に向き直り眉間に皺を寄せ、解せなさそうな顔をされる。 多分、あれ(バイク)に乗れて4本足の馬に何故乗れないという感じだ。 ムッとして、こっちも眉間に皺を寄せて遺憾の意を表明する。 ベルナールは大きな溜息の後、手を差し出してきた。意味が分からず握手する。私の握力は破壊的だと自覚している為、やんわりと握った所をぐいっと馬上に引っ張り上げられた。余りにも吃驚して出た言葉がこれだった。 『何さらすんじゃっ!』 その場の空気が一気に冷えた気がする。いや気がするではなく間違いなく冷えた。 何故なら私を馬上に上げた張本人が己の剣の鞘に手をかけたからだ。今だ鞘から手を離してない男に、冷や汗まみれに弁明する。 『馬上に上げんねんやったら、一言言うてからにしてくれるか。脱臼するやないか。はぁ…マジ痛いわ』 全く痛くも痒くも無かったが、さもそっちが無礼やろとばかりに肩を擦った。 「…それはすまなかった……」 鞘から手を離し私に詫びるこの男にホッとした。周りの騎士達も私と同じようにホッとし、改めて出発したのだった。
/820ページ

最初のコメントを投稿しよう!

471人が本棚に入れています
本棚に追加