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「どういう事でしょうか」
無礼極まりなくノックもせずに執務室に入り、威嚇じみた声で睨みつける。
机で書類に目を通していた男がこちらをチラッと見て、溜息を吐いた。
「貴君、ノックもせずに入るなど無礼ではないか。此処は王城、振舞いに気を付けられよ。それに開口一番貴君からの質問とは、これ如何に。私は騎士団隊長としての報告を待っていたのだが?」
その言葉にギリリと唇を噛んで、銀の眼で再度睨みつける。胸に手をあて騎士の礼をして目の前の男に報告する。
「第一騎士団隊長ベルナール・シュヴァイン只今戻りました。越境したザルビア軍との戦いは異国から来た女子の助けにより、戦況が一転しザルビア軍の一時撤退となりました」
机に座った男は首を振って、そうじゃないとばかりにまた溜息をつかれる。
「大体の報告は早馬にて聞いている。私が聞きたいのはその先だ。異国の者の事だ。何処の国の者で、間者という可能性はないのかという事だ」
「間者?それはないでしょう」
「何故そう言い切れる?」
道すがら聞いた女子の話をした。そして、容姿の話しになると
「なんと!」
「普通瞳が黒なら肌は茶褐色。肌が白色なら黒の瞳はありえません。肌の色が茶褐色と白色の者が結婚しても子供はどちらかの肌の色で生まれるのが普通。その女子のありえない容姿…そして国名も聞いた事がないとなれば導き出される答えは………」
──────迷い人。
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