第一章ヤンキー娘、異世界に行く

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『・・・。』「・・・。」 おっさんと居るこの空間に居た堪れなさを感じるのは、私だけだろうか? 先程馬車に乗り込んだ時、中は広くゆったりしたものなんだなと浸っていた事が嘘のようだった。 図体のでかいおっさんのせいでその空間は狭苦しく、酸素も薄い感じになった気がする。しかも、角を曲がる度におっさん側に負荷がかかって、ギシギシと軋む馬車。 何やねん、この笑うに笑えへんシュールな状況は! 猫背で窮屈そうに座るおっさんが、ゴホンと1つ咳払いをして話し出す。 「トーカ殿は、何歳でいらっしゃるか?」 『17歳やけど……。おっさ…ラムスさんは?』 「45歳です。因みに独身。現在婚活中ですぞ」 歳を聞いたのに、いらん情報が付いて来よった。取りあえずスルーやな。 『ベルナールさんは?』 「確か26歳のはず。彼も独身ですぞ」 またいらん情報が付いて来た。 「トーカ殿は、独身で?」 『独身やな…この会話(独身)に意味あんのか?』 「………個人的に是非(・・)聞きたかった事で、お気を悪くされるな」 おっさんが是非ってとこ強調したけど、もう一遍スルーしとこ。 それよりも、さっきから気になる事を聞いてみた。 『なぁ、袖口から見える複数の傷跡からして、ラムスさんも騎士か何かか?』 「元騎士です。半年前に引退しました」 『ベルナールさんと同じで、隊長か何かやってたんか?』 「将軍をしておりました。今までの功績で爵位を貰って隠居です。今は婚活ばかりしておりまして…昨日も…………」 婚活、婚活と説明するおっさん。お前、そんな事よりサラッと言うたな将軍って、しかも爵位があるって! 引きつりながら、敬語に切り替えた。 『そ…それで、元将軍さんは今何してらっしゃる?』 「先程も申しましたが、婚活中ですが?」 『………し、仕事もせんと毎日婚活してるんかいな!!』 思わず突っ込んだら、口調が元に戻ってしまった……。とほほ…である。 「///今だこれという(つがい)が見つからず…半年も過ぎてしまい………」 『?つ…つがい???』 「はい、(つがい)ですが?何処かおかしいですかな?」 結婚相手、もしくは恋人を此処では動物のような言い回しの(つがい)と表現するんか? むむむむ………(つがい)=恋愛対象者?
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