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トーカが部屋に案内されてる頃─────
「閣下…、お部屋は例の部屋で準備しましたが…あのお嬢様は確かに変わってらっしゃいますが、宰相閣下が疑うような者には見えないのですが………」
ラムスの上着を脱がせながら、執事のフレドリックが問いかける。
このフレドリックも実は元騎士。身分は低いが貴族の作法もあり、腕と頭脳を見込んでラムスの父親が当家の執事に召し抱えた。
「うむ。お前が言う事は分かる。だが………」
「だが、何でしょう?」
「ザルビア軍を…ガントを瞬殺で倒した事は、只者ではないと言う事実。ベルナールはあの者を信用しておるが、それだけでは上層部を納得出来まいて…。恩義を返すにしても、素性をもっと知らねば…。あの者の強さは奇怪そのもの。馬車に乗る時に手を握ったが、剣士のようではなく、また庶民のような荒れた手でもなかった。所謂何もしてない手だ。では貴族かと聞かれれば、この屋敷を見て掃除が大変そうと言いよった」
「・・・。」
「今暫し、我が元で観察が必要。お前もそれを留め置いて接してくれ」
「御意に」
「話は変わるが、フレドリック!今日の見合いの姿絵は何処だ?!」
そう言って、きょろきょろと辺りを探す閣下。
「………………………此処に………」
閣下にとって、あの者は奇怪であってもご自身の見合いの方が重大…その程度の疑いか……。
机の上の数枚をラムスに渡す。
「段々少なくなって行く気がする…」
「…………気がするではなく、確実に減ってございます」
「………………………私は、結婚できると思うか?」
こうやって真剣に聞いて来る。私にどのような答えをお求めなんだろうか……。
「番は一生もの。存分に悩まれませ…」
「むむむむ………」
「そろそろトーカ様のご準備も出来ていましょう。閣下も早くお着替え下さいませ」
「うむ……」
納得のいかない数枚の姿絵を机に置いて、私が用意した服に着替え始めた。
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