第一章ヤンキー娘、異世界に行く

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うむむむむ……と眉間に皺を寄せて今だ私は考え中。 バイクに乗ったまま河に落ちたまでは記憶がある。そこから何故にこのような場所に立っているのかが分からない。足元には、あの河川敷にはかなわないが、小川が流れていた。 因みにさっき夢だろうかと思い、自分の頬をそこまでするかというぐらい抓ってみた。痛みを実感しながらも目の前の景色は変わらずで、これが現実と理解はできた。が、私が河川敷から此処にいる訳が全く分からないし、此処が何処かも分からない。 今、目の前の戦っている奴等の中に入って『つかぬ事をお伺いしますが、此処は何処ですか?』と聞くような非常識な感覚はなく、考えあぐねている所だ。 そんな時、1人の鎧を着た男の戦い方に目が釘付けになる。 そいつは圧倒的な強さがあった。 どうみてもこの戦いの劣勢な方の騎士だったが、1人でそれを押していた。先程斬られた奴の言ってた隊長だろう。敵に囲まれながらも「怯むな!続け!」と言って、己自身が先頭をきって前に進んで行く。 河川敷でのヘタレ総長との違いに、思わず見惚れて口が緩む。 「くそっ!"銀魔"を討ち取った者には、金と領土を与えるぞ!」 少し離れた場所に居た男がそう叫んだと同時に、目まぐるしく人の群れが一点を目指して動き出した。 「隊長を守れー!!」だとか「銀魔を討ち取れー!」の言葉が飛び交う。 どちらが善でどちらが悪なのか分からないが、自分の中で絶対嫌いな言葉が出た時点で、気持ちは劣勢な騎士達の方に動いた。 必死に"銀魔"と呼ばれた隊長を守る騎士達。 金の為に動く相手の騎士達。 それを餌に後ろで指示を出す男。 エンジンを入れてバイクが動くか確認する。 『よし!バイクは、生きとる。ほんじゃ、いっちょかましてきますか!』 そう言って、バイク音を響かせ目の前の戦いの輪に向かって行ったのだった。
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