第五章これが最後だ!ヤンキー娘、雨降って地固まる。

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「今日も、平和だな・・・」 陽気な日差しが入ってくる窓の傍で、今俺は報告書を書いている。 そんな時、窓下から声が聞こえた。 『健太!ツーリングに行くぞ!』 「俺、三上さんをすぐ連れてくるっす」 声が聞こえて覗いてみれば、厩から出してきた鉄の馬を引いて来るトーカが見えた。 木の下で昼寝でもしていたのか慌てて立ち上がった健太。 健太は、自分の鉄の馬に"三上さん"と名前を付けた。 こいつなりの不器用な愛情表現だ。 三上という男がベルナールを連れて戻ったあの日、健太は悪態をつきながらも嬉しそうだった。いつも、俺に絡むのがほとんど三上から離れず絡んでた。 それを見て若干・・妬けたぐらいだ。 そして別れの時、健太の素顔を見る。 "さよなら、三上さん" たったそれだけのセリフだったが、そこにはちゃらけた健太は居なかった。 あれが、こいつの本当の姿。 ちゃらけた言動で自分自身を隠しているが、実際は軽い奴ではない。どうも俺にはあれが虚勢をはった態度のように思えて仕方がない。こいつが隠す以上、俺は気づかないふりをするしかないのだが。 人間観察…諜報部の基本。 そして、自分だけの知り得た情報は手札だ。 だがこの情報、未来永劫手札として出てくる事はないだろう………。
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