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「随分勝手なこと言うのね。一人でいたくないのに、みんな消えればいいなんて、矛盾してない? それに、あんたこそ、私の何が分かるの」  いよいよ風は強くなり、木々を大きく揺らす。  口を噤んだ小夜はその風のただなかにあって、揺らぐことなく立っている。  髪は亜月と同様煽られ嬲られているが、嵐のように荒れ狂う風の中で、まっすぐに立ち瞬きすらせず見つめてくる小夜は、どこかいつもの彼女と違う。 「……小夜。あんたは、どうしたいの。一人でいたくないの。それとも、みんないなくなってしまえばいいと思ってるの」  慎重に問う亜月を黙ったまま見返した小夜は、乱れる髪の隙間で唇の端を引き上げた。  嗤う。  細い三日月のような弧を描いた唇。 「いらない。みんないなくなってしまえばいい」  最初こそ、小夜の声だったのに。  言い終わる頃には酷く間延びして低く響いた。  不気味なその声音は、聞き覚えがある。  亜月は身構えて小夜の動向を窺った。 『また、会ったな。小娘』  小夜の口を借りて、そいつは言った。 「やっぱり、……禍津神……! 」  どうしよう。  どうしたらいい。  私に何ができるの。 「……随分、浮気者なのね。私の次は、小夜? 」  亜月の言い様に禍津神はおかしそうに笑った。     
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