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いつもどおりの朝。
いつもどおりの時間。
いつもどおりに自分の部屋で目を覚ました亜月は、ベッドに横になったまま目を瞬かせた。
昨日のアレは、夢だったのだろうか。
そう思ってしまうほど、いつもどおり。
のそ、と起き上がり、部屋を見回す。
まだ薄暗い部屋は、それでもどこも変わることなく静まり返っている。
いつもと、何も変わらない。
部屋の隅の机に目を向ける。
放り出された鞄と、その上に無造作に置かれたハンカチ。
ベッドを下りて、そっとそれを手に取る。
「……禍津神と、……言霊師」
夢だとして。
この二つの単語は、亜月の知識には存在しないものだ。
普段から、それほど想像力が豊かな方でもない。
いくら夢とはいえ自分の知識にない単語が出てくるものだろうか。
「………夢じゃない。いたんだ。禍津神も、……言霊師も」
禍津神はともかく、言霊師はどこかにいるはず。
探し出して、もっと詳しい話を……と考えて、はたと我に返る。
「名前も知らないのにどうやって探すのよ」
ぽつ、と呟いて、盛大に溜息を吐き、ハンカチを放って着替えを始めた。
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