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 荒げた声が割れて聞こえるほど、その声はざらざらと不快な音を含んでいて、亜月は思わず眉を寄せる。  どこかで聞いた覚えがある。  この、耳障りな音。  これは。 「小夜、あんた……」  大きく目を見開いて、亜月は小夜を見上げた。  ざわざわと木々がざわめく。  吹き始めた風はどこか生ぬるく、そして、血なまぐさかった。  髪を攫い嬲る風にも、亜月は身構えてただ小夜を見つめる。目を逸らしてはいけない気がした。  目を、逸らしたら。  不意を突かれる。  ――――― コイツに。 「一人が平気なんでしょ、亜月は。私がいても迷惑そうだったもんね。でもね、一人が嫌な人間もいるの。置いて行かれるのが嫌で、はみ出すのが怖い人間だっているの! 」  小夜が言葉を重ねれば重ねるほど、風は勢いを増し、血なまぐさい匂いは強くなる。 「群れるのが嫌いで、いつだって一人で、冷めた顔して離れたところにいるあんたなんかには、一生分からない。私が、どんな思いでいたか。こんな、……こんな世界も、人も、みんな消えてしまえばいいって何度思ったか! 」  風が唸りを上げて亜月の髪を舞い上げる。  顔にかかる邪魔な髪を払いのけて、亜月はベンチに座ったままの姿勢で下から小夜を睨み据えた。     
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