社畜童話~ぼくのパンケーキ~

2/41
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
 システムが本来と違う挙動をしたり、本来できる挙動ができなかったりするとエラーとして通知される。それが障害通知だ。イレギュラーな処理でのエラーなら可愛いものだし説明も容易だが、本来試験したはずの通常処理でエラーが起こると、チーム総出で対応に当たらなければいけないこともある。障害が起こったときには、手元の環境で再現させてみるのだが、そういった類のエラーは再現性がなく説明や対応に数日かかってしまうこともある。システムの信頼性を担保しつつスマートにかつスピーディに事態を収束することが求められるので、こちらも徹夜で対応を余儀なくされることが多い。  本来はまだまだ予断を許さない状況だけれど、そんな修羅場をくぐり抜けた後輩たちを元気づけたくて俺はコーヒーを掲げる。 「やった!」 「先輩のおごりですね!」 宮崎と西野もコーヒーカップを合わせて乾杯する。 「いいぞ。今日は奮発だ!」  焼肉に決まったのはそれから5分後のことで、仕事合間のコーヒーブレイクを終了し、俺たちは業務に戻った。障害通知がなくとも仕事は山ほどある。そろそろ第3四半期にあたる10月から12月の計画を出さなければいけない。実装部隊の進捗状況も気になるし、課長に障害対応がひと段落したら対応内容をまとめておいてくれとも言われている。 やることは山積みだ。俺は指の体操をすると猛然とキーボードを叩きはじめた。  顔を上げるとすでに19時近くになっていた。 「おふたりさん、そろそろ行けるかー?」  椅子を下げて、後ろの宮崎と隣の西野に声をかける。とは言っても、最近ではビルを借りている代金も惜しいと、やたらとフロアに人を押し込んでいるため、パーティションなどありもしない環境では作業具合など丸わかりだ。 「俺はこのメール送ったら行けます!」 「中島さーん、これが終わらないですー」     
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!