0人が本棚に入れています
本棚に追加
真冬の太陽
薄暗く、どんよりとした空の下、私は自転車に乗って家を出た。
誰にも止められることも、誰にも気にかけられることもなく、冷たい二月の空気の中を突っ切った。
好都合だと思った。
けれど、誰かに「やめなさい」の一言でも言って欲しかった気がする。どこに行くのかさえ、聞いてもらえないだなんて思わなかった。勝手ながら、少し胸がつんとした。
もう何もかもが嫌になっていた。
将来のこと、中学のこと、今の数少ない友達のこと、失ってしまった友達のこと、自分自身のこと――
そんな風に、大雑把な答えならいくらでも出せる。それなのに、その何がそんなに嫌なのか、いったい何が恐ろしいのかと聞かれると、うまく言葉にできない。それが何より一番恐ろしい。こんなに恐怖しているのに、それを言葉に置き換えられないのだ。
暫く自転車を走らせていると、防風林の間から朱く染まった海が姿を現した。私は自転車を停めて、木々のわずかな隙間に腰を屈めて潜り込んだ。もう空は大分暗くなっていて、朱く染まった海の上には、まるでぽんと置いたかのような、気味の悪いほど丸く赤い太陽が、ゆっくりと水平線の真下へ吸い込まれようとしていた。
最初のコメントを投稿しよう!