真冬の太陽

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 ――置いていかないで。  その瞬間、この太陽に着いていきたいと思った。  防風林を抜けると、誰もいない砂浜が広がっている。遠い水平線の向こうから吹き抜けてきた穏やかな海風が、肺いっぱいに流れ込む。  その時、この風と同等の存在になりたいと思った。誰にも見えず、気にもされない。  もう嫌だ。限界だ。正体不明の恐怖、不安、誰に対してなのかもよくわからない、行き場のない怒りと苛立ち。  自分の行いの何が悪かったというのか、どうすればこの状況から抜け出せるのか、ずっと考えてきた。毎日毎日、自分と向き合う努力をした。けれど、その『自分』はいつもどこかそっぽを向いている。  そんなことを、幾度となく繰り返し、余計に自分を追い詰めてしまった。だから、今日はここに来た。  今、海に入ったらどんなに冷たいことだろう。  私が帰って来なかったら、残された人達は何を考えるだろう。 そしたら、私はいったいどこへ逝くのだろう。  一歩一歩、波打ち際へと進んだ。寄せる冷たい波が、薄汚れたスニーカーを湿らせる。指先に、ひんやりとした感覚が走る。  前方の太陽は海の底へと沈むように、ゆっくりと、音も無く、誰に見守られることもなく、当たり前のように消えていく。     
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