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「同棲しないか」 と尚人から言われたのは一ヶ月前。デートの最後に立ち寄った、喫茶店『ダリ』でコーヒーを飲んでいる時だった。 唐突な提案に迷うそぶりを見せると 「この間みたいに急にいなくなられたら嫌だから」 と言われてしまった。 「もう、離れたりしません」  ため息交じりに答えると、 「君は思い立つと俺の気持ちなんて御構い無しに行動するところがあるからな」 と言う尚人の瞳の奥に真剣な光が湛えられていて、ゆかりはどきりとした。  そう言われるのも仕方ない……。  〈前科〉があるゆかりは反論できず、首をすくめた。 実は正直、一緒に生活するのが怖い。  何故って、家にいる間ずっと一緒、ということは自分のだらしないところやいい加減なところも全て相手に見られてしまうわけで。  ……幻滅されたくない。  いや、今だって一人暮らしの部屋には上がってもらっているし、翌日が休みなら尚人がゆかりの部屋に泊まっていくことだってある。だから、今更何を気にしても遅いのだろうけれど。それでも、一緒に暮らすとなると色々ボロが出そうで、マズい。
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